★新人スタッフ『さいとう たかお』がお届けする
ちょっと甘くて切ないラブストーリーを
お楽しみ下さい!
夕暮れが日増しに早くなり、早朝は秋を思わせる
猛暑は蝉の鳴き声と共に過ぎ去ろうとしていた
『わたしたち食べ物の好みが合いそうに無いわね』
雄一朗は、一瞬自分の耳を疑った・・・
マリは、そう平然と言ってのけたのだ
人気の韓国料理店での出来事だった
好みが合わない・・・
つまりこの先は無いと言う事か
雄一朗は、千切れ雲を見上げながら
お気に入りの
愛車のステアリングを握っていた
特に目的地は無かった・・・
ただ、時間の許す限り走っていたかった
「なるようにしかならない」
焦りや不安があると、いつもこの言葉を思い出す
雄一朗が若かりしセールスマン時代に
私が慕っていた上司の方が、困っている私にかけて
くれた言葉だ
長いトンネルに入ってしまったのか
出口は見つかるのだろうか・・・
マリとの思い出と言えば
慣れぬ手つきで、自分の日本での名前を漢字で
一生懸命書いてくれた時、その姿に雄一朗は
心を打たれた事だ
その思い出を胸に
秋への扉を明ける日が来たようだ
必ず晴れの日がやってくる
そう信じて♪
【完】
※ストーリーに登場する人物等は全てフィクションです